慢性疼痛に対する身体に着目したセルフケア
痛みの対処として大切なことは、まずなるべく早く医師に相談すること、痛みを取るための服薬等で痛みを改善するための対処をとるという医療的なケアがベースです。
ただし、今、痛みに向き合ってつらい想いをされている方に、痛みへの対処について、服薬以外での学術的にも知られているポイント、線維筋痛症の方たちへのカウンセリングをしている中で教えてもらったセルフケアのヒントやポイントをお伝えしたいと思います。
セルフケアを行うにあたってまず強調したいのは「自分に合う程度を見つけること・無理はしないこと」です。痛みに効果があるならとトライをして、真面目に“やりすぎ”てしまうとかえって痛みを増強させることもあります。やれるところから、そして、自分にとって無理のない程度、心地よいと思える程度を確認しながら、ご自身の身体の感覚と向き合っていただけたらと思います。
今回はセルフケアその1として、身体へのアプローチについてご紹介します。
セルフケアに関しては、明治国際医療大学・伊藤和憲先生が厚生労働省科学研究費・地域医療基盤開発推進研究事業として「慢性疼痛患者に対する統合医療的セルフケアプログラムの構築」を発表していますので、ご参照いただければと思います。

痛みのセルフケアとしての身体を動かすこと
整形外科医・理学療法士・作業療法士など、痛みに身体的・運動機能的な視点から関わる人たちが発信しているのは、「痛くても身体を動かすことが大切」ということです。
線維筋痛症をはじめとする慢性疼痛のある方は、痛いから動けない・動かすことができないという思いや考えから、日々の活動も制限してしまう傾向があります。もちろん、横になって休んだり、動かないことが今の状態を少し良くするのだというときには「対処」として休む・動かないという選択肢も良いでしょう。
ただし、長期的に見たときに、動かないことで筋力が低下することや、痛みのために身体を縮こませているとしたら筋肉のこわばりが長く続くことになり、次に活動するための筋力の維持や、身体を動かしやすくするために筋肉を緩める機会が減ってしまうことにもなります。場合によっては筋肉がこわばり続けることで、より痛みを感じやすくなる可能性もあります。
まずは、筋肉トレーニングなどの負荷が強いものではなく、ストレッチ・ヨガ・太極拳などのような、身体を緩めて可動域が広がる・維持できるような運動をすることが大切だと言われています。長期的には、活動をするための筋力を維持するためのトレーニングも、自身の調子を見ながらできる範囲であれば、取り入れていけると良いかもしれません。
痛みのセルフケアとして身体を温めること
身体を温めること・温熱療法によって、筋緊張を緩めること、また自律神経のバランスを整えることが痛みの感じ方に影響を与えることで、痛みが軽減されることもあります。長年、線維筋痛症への統合医療による実践研究をされている青山・まだらめクリニックの班目健夫先生は、夏でも湯たんぽを使って十分に身体を温めることで疼痛の程度が改善したことを学会で発表しています。身体は十分に温めても、汗をかかないように気をつけることなど、湯たんぽを使った温熱療法の注意点については、斑目先生のホームページやブログをご参照ください。
場合によっては、一時的に冷湿布で冷やした方が痛みの感じ方が楽だと思う方もいるかもしれません。ご自分に合う方法かどうかを見極めながら、無理のない範囲で取り入れてもらいたいと思います
痛みと睡眠の関係
線維筋痛症では疼痛症状と合わせて、睡眠障害の症状が併発していることが多いことが指摘されており、痛みの増悪因子として眠れないこと(寝付けないこと・よく眠れないこと・途中で起きてしまうこと等)が挙げられています。
身体の痛みがあるために眠れないということも、眠れないということがストレスとなって痛みを誘発しやすくなることもある、「悪循環」が指摘されています。私も参加した、こころと痛みクリニックの長田賢一先生の研究では、痛みの程度の大きさと、睡眠の問題の大きさは正の相関関係にありました。痛みがひどい人ほど眠れないことに問題を抱えており、痛みの程度が低い人は睡眠の問題が少ないという結果が示されていたのです。
そのため、痛みの改善を図るときに、睡眠の改善を図ることを一つの手がかりとすることもできます。まずは医師と相談しながら、必要に応じて睡眠薬の服薬等でしっかりと眠ることを考えていただきたいと思います。また、良い睡眠には自律神経の働き、交感神経と副交感神経のバランスが整っていることが必要になります。眠りの工夫については、不眠についてのブログを参照してください。
そして、近年のエビデンスがある研究をもとにして、どのように自律神経のバランスを保つことができるか、睡眠の状況を具体的によくする方法を医師によって書かれた本や情報も多いので、取り入れやすいところから良い睡眠のための工夫を実践していただきたいと思います。
次のブログ、痛みのセルフケアその2では、慢性疼痛とうまく付き合っていくためのこころの状態について書いていきます。
